子育て応援隊 そうかでの子育てを応援している団体・個人です。

　日本では離婚後の親権について、父母のいずれか一方にのみ認める「単独親権制度」が採用されていましたが、民法が改正され、改正後は、父母の協議により、共同親権を選べるようになります。離婚後も父母の双方が子どもの親権を持ち続けるということで、さまざまな議論があります。

　共同親権制度の導入は、家族のあり方や国際的な人権意識の変化を受けたもので、両親の離婚後も子どもが両方の親と関わりを持ち続けられるようにすることで、子どもの精神的安定やアイデンティティの形成に役立つことが期待されています。子どもの権利条約でも、子どもが父母双方と定期的に接触を持つ権利が認められており、国際的な水準に近づけるという意もあります。
しかし、共同親権を導入することが直ちに子どもの利益につながるとは限りません。
たとえば、夫婦間に深刻な対立やDV、モラルハラスメントがある場合、共同での親権行使が困難となり、子どもの安全や福祉が脅かされるおそれがあります。このようなケースでは、「こどもまんなか」の理念に反して、親権の制度が子どもにとって重荷になる可能性があります。
また、共同親権のもとでは、子どもの進学、医療、転居といった重要な決定を両親の合意で行う必要があり、迅速な判断が求められる場面で対応が遅れ、子どもに不利益をもたらすことも考えられます。さらに、親の一方が育児に関心を示さず、もう一方に負担が偏るといった状況では、事実上の単独養育となってしまい、「形式だけの共同親権」に陥る危険性もあります。
　このような問題を避けるためには、単に親の権利を認める制度ではなく、子どもの声を聞き取り、その意思を尊重する仕組みの整備が必要になります。
具体的には、調停や裁判の過程で子どもの意見表明を保障したり、専門的な第三者が子どもの立場・意見を代弁する制度（たとえばこどもアドボケイト制度など）の導入などが考えられます。
　子ども自身が、自分に関係する事柄に対し、自分の気持ちや感じていることすべてを表現することが難しい場合であっても、その子の最善の利益を考えるのがおとなの責任です。
　民法改正による共同親権制度の導入は、子どもにとって両親とのつながりを維持する可能性を広げるものです。しかし、それが子どもの利益にかなうものであるためには、「こどもまんなか」の視点、つまり子どもの最善の利益を最優先に考えること、子どもの意見（views）がしっかりと反映される制度設計が極めて重要です。
　すべての子どもが安心して育ち、健やかな成長を遂げられるよう、私たちおとなも、しっかりとこの改正について考えていきたいですね。